胸椎、腰椎の圧迫骨折①~新鮮骨折なのか?陳旧性骨折なのか?

自転車、バイク、歩行中の事故で多いのが胸椎、腰椎等の脊柱の圧迫骨折です。事故により道路に尻餅をつくようにして転倒し、胸椎等を圧迫骨折するものです。

圧迫骨折が、事故により生じたものなのか?もともとあったものなのか?

高齢になると骨密度が低下し、ご本人が知らないままに圧迫骨折していることがあります。腰痛に悩まされ、病院でレントゲンを撮ってみたら、圧迫骨折していたということがままあります。
特に高齢の女性は、閉経後に骨密度の低下が進み、誰でも多かれ少なかれ骨粗鬆症の状態です。 それ故に、事故により圧迫骨折したと思われる場合でも、相手方保険会社から、「その圧迫骨折は事故の前からあったものだ」と主張されることがあります。

どのように判別するのか?

事故により新たに生じた骨折を「新鮮骨折」といい、事故前からある古い骨折を「陳旧性骨折」といいます。
この新鮮骨折と陳旧性骨折を判別するのは、レントゲンではなく、MRI画像です。

MRI画像の見方

MRI画像には、大まかに①T1強調画像②T2強調画像があり、以下のような特徴があります。

  1. T1強調画像:水分を黒く写す(低信号)
  2. T2強調画像:水分を白く写す(高信号)

骨には毛細血管が張り巡らされていて、骨折すると出血が起こります。この出血(大部分が水分)が異常信号として捉えられ、T2強調画像では高信号、T1強調画像では低信号、を示します。骨折すると、骨の内部が出血し、その水分をT2強調画像が明るく写しますので、骨折したことが分かります。
骨折後、徐々に骨がついていきます。それに伴い、出血が減ってきますので、T2強調画像の信号が低下していき、最終的には、信号上昇がなくなります。T1強調画像でも、同様に、最終的に信号変化がなくなります。

新鮮骨折と陳旧性骨折の判別

画像を用いて説明していきます。

新鮮骨折

以下は、新鮮骨折です。左側がT2強調画像、右側がT1強調画像です
第2腰椎(L2)が、T2強調画像は高信号(明るく写す)、T1強調画像は低信号(黒く写る)を示しており、新鮮骨折であることが分かります。

陳旧性骨折

以下は、陳旧性骨折です。

L1(第1腰椎)、L3、L4に変形があり、圧迫骨折していることが分かりますが、T1強調画像でもT2強調画像でも信号変化がありません。骨折してから時間が経過し、出血が収まり、信号変化がなくなっています。

新鮮骨折と陳旧性骨折の両方

もう1つ画像を紹介します。新鮮骨折と陳旧性骨折の両方が見られる画像です。

左は、事故の3日後に撮影されたT2強調画像です。
第12胸椎(Th12)が高信号を示しており、新鮮骨折と考えられます。第2腰椎(L2)も、椎体が変形しており圧迫骨折をしていますが、信号変化がなく、陳旧性骨折です。

右は、T1強調画像です。
Th12は低信号を示しているのに対し、陳旧性骨折であるL2には信号変化がありません。

以上のように、MRIのT1強調画像、T2強調画像の信号変化を見ることで、新鮮骨折であるのか陳旧性骨折であるのかを判別します。

素因減額の問題

新鮮骨折だということが確定すると、次に、保険会社は、「骨粗鬆症で、もともと骨が弱かったのだから、その分を損害賠償額から割り引くべきだ。」と主張してきます。これを素因減額といいます。
高齢の女性の場合、カルテに「骨粗鬆症」と書いてあることがよくありますので、そのような主張がされるのも無理のないところではあります。

しかし、素因減額は、素因があったとしても(骨粗鬆症であったとしても)、「年齢相応の加齢変化」にとどまるものであれば、素因減額しないということになっています。
高齢者は骨密度が低下しているのが普通ですので、カルテに骨粗鬆症と記載されていても、骨粗鬆症の薬を飲んでいたとしても、骨密度が年齢相応のものであれば(そういうケースが多いです。)、素因減額の主張は退けられます。

経験談

70代後半の女性が事故により圧迫骨折をしたケースで、はじめの病院の医師が陳旧性圧迫骨折、2つ目の病院の医師が新鮮骨折と診断し、診断結果が分かれてしまったケースがありました。
裁判では、保険会社は、当然、陳旧性圧迫骨折だと主張し、ここが争点となりました。 事故直後のMRIのT2画像を見ると、骨折箇所が真っ白にピカッと光るのではなく、ややくすんだような写り方でしたので、疑義が生じうるところです。

しかし、2つ目の病院で、時間をおいて何度かMRIを撮っていただいたのですが、その画像を見ると、信号上昇が収まってきており、事故で圧迫骨折をして、それが徐々に回復していっているように見えました。
そこで、1つ目の病院の主治医に面談を申し込んだところ、転勤していて、もういないということでした(よくあることです。)。
愛知県の病院に転勤されていましたので、そこまで追いかけていきました。 面談で、2つ目の病院で撮影したMRIの画像を並べて見ていただいたところ、医師は、「あ~、これは所見を変更させてください。フレッシュな骨折ですね。」と仰り、意見書を書いてくださいました。

その意見書を裁判所に提出したことで、争点が無くなり、当方の請求に沿った内容で、裁判上の和解が成立しました。
MRIを何度か撮影している場合は、画像を経時的に見るのも有効だと思います。

文責安藤誠一郎(安藤誠一郎法律事務所 代表弁護士)

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