- 脳障害・脊髄損傷
高次脳機能障害の要件③~画像所見
高次脳機能障害の3つめの要件は、脳の損傷がCT、MRIなどの画像で確認できることです。
1.脳の出血
頭部外傷により脳を損傷すると、急性期の症状として、脳の出血が見られます。その出血が、CT、MRIなどの画像で確認できることが必要となります。
2.脳萎縮
慢性期には、脳室拡大、脳溝拡大などの脳萎縮が生じます。この脳萎縮は一時点の画像を見るだけでは分からず、受傷直後の画像と慢性期(およそ3か月後)の画像とを比較し、判断します。
3.CTとMRIの違い
CTと比べ、MRIは脳内の微細な出血を捉えやすいというメリットがあります。
反面、MRIを撮影するには20分程度の時間がかかりますので、救命救急の場面で、そのような悠長なことはなかなかできません。
通常、急性期の画像はCTで、その後、必要に応じてMRIを撮影することになるのではないでしょうか。
4.MRIについて
MRIは、撮影方法により、様々な画像を得ることができます。そのうち、いくつか重要なものを説明します。
① T1強調画像とT2強調画像
T1強調画像は、水は黒く低信号で抽出され、大脳皮質や白質等の解剖学的な構造が捉えやすいという特徴があります。
それに対し、T2強調画像は、水は白く高信号で抽出され、多くの病巣が高信号で抽出されるため、病変の抽出に有用とされています。
つまり、水、血液(大部分が水分からなる)は、T1強調画像で低信号、すなわち黒く映し出され、T2強調画像で高信号、すなわち白く映し出されることから、出血部位を確認することができます。このような特性を利用して診断が行われています。
② T2 FLAIR画像
FLAIRは脳室が黒く写りますので、脳室周辺の病変を確認しやすくなります。
③ 拡散強調画像
拡散強調画像は、一見するとピンボケしたようなぼんやりとした画像なのですが、出血をくっきりと白く写し出します。そのため、急性期の微細な出血を逃さずに写すことができます。
脳梗塞が疑われる場合によく用いられます。
④ T2*(T2スター)
T2*は、脳の出血を捉えやすく、CTでは捉えられないような小さな出血も黒く写り、確認することができます。そのため、びまん性軸索損傷(大きな血腫が見られない)のケースで、点状出血を確認するのに有効です。