- 治療
健康保険を利用する場合の手続~第三者行為による傷病届
交通事故で健康保険を利用する場合の手続の流れ、書類について、説明していきます。
1.病院への申告
まずは、病院に、「治療に健康保険を使いたいのですが」と伝えます。
そうすると、病院から、健康保険の手続をするよう指示されます。
2.健康保険組合への連絡
次に、健康保険組合(国民健康保険の場合は市役所)に連絡し、交通事故にあったこと、治療に健康保険を使いたいことを伝えます。
そうすると、健康保険組合(あるいは市役所)から、第三者行為による傷病届の書類が一式送られてきます。
3.第三者行為による傷病届の提出
(1) 第三者行為による傷病届とは
通常の病気、怪我の場合、患者が3割負担の場合、7割は健康保険組合が負担し病院に支払います。しかし、交通事故の場合、本来は加害者が治療費を負担するべきで、健康保険組合が負担するのはおかしいことになります。
そこで、健康保険組合は、支払った治療費を、加害者(任意保険に加入している場合は保険会社)に請求していきますす。そのために、健康保険組合に対し、「怪我をした原因となる人が別にいますよ」とお知らせをするのが、第三者行為による傷病届です。
(2) 必要な書類
① 第三者行為による傷病届
事故の発生日時、被害者の氏名・住所、加害者の氏名・住所等を記載する書類です。交通事故証明書を見ながら記入します。
② 事故発生状況報告書
事故の状況を説明する書類です。図を書いて事故の発生状況を説明します。
③ 念書・同意書
健康保険組合が支払った治療費について、健康保険組合が加害者に対する損害賠償請求権を取得することに異議を述べないこと等を約束する書類です。
④ 誓約書
健康保険組合が支払った治療費をお支払いしますという内容の加害者の誓約書です。加害者に署名捺印してもらいます。
⑤ 交通事故証明書
4.相手方(あるいは保険会社)が④誓約書の提出を拒んだら?
保険会社が、「怪我をするような事故ではない」として受傷の事実を争ったり、治療期間が長期にわたり「これ以上は治療の必要がない」として治療の必要性を争う場合、誓約書の提出を拒むことがあります。
その場合、「加害者に署名捺印を求めましたが、拒まれました。」と書いて健康保険組合に提出すれば足ります。加害者側の協力が得られなくても問題ありません。
5.診療報酬明細書の取り寄せ
自賠責保険に治療費、休業損害を請求する、後遺障害の申請をする等の場合には、病院が発行する診療報酬明細書(レセプト)が必要となります。
自由診療で保険会社が治療費を病院に支払っている場合は、病院はレセプトを保険会社に送っていますので、保険会社からレセプトを送ってもらえばすみます。しかし、健康保険を利用している場合、病院はレセプトを健康保険組合に送っていますので、保険会社の手元にはありません。
そこで、健康保険組合に対し、「開示請求」という手続をして、レセプトのコピーを送っていただく必要があります。
健康保険組合に必要書類一式を送って開示請求をすると、1か月ほどで(健康保険組合によっては3か月かかるところもあります。)、レセプトのコピーが送られてきます。
健康保険を利用している場合、自賠責に被害者請求をする前に、この開示請求をしてレセプトを取り寄せる必要がありますので、その分、時間が余分にかかります。