肩の腱板損傷~後遺障害第10級10号
事故直後から当事務所に依頼
最終賠償金額 約1440万円
後遺障害等級 第10級10号
事故の状況
渋滞のため停止していたところ、後方より走行してきた車両に追突され、その衝撃で前の車両に追突する玉突き事故の被害に遭いました。
受傷
左肩腱板損傷の傷害を負い、肩の痛み、運動障害が続きました。
症状の推移、治療経過
事故後、整形外科に通院し、消炎鎮痛剤の処方、リハビリを受けましたが、症状は改善しませんでした。
肩の治療に強い病院をご紹介し、受診していただきましたが、外科的手術は勧められないという意見でした。
その後、紹介先の専門医の助言もあり、注射による治療を追加しましたが、目立った改善は見られず、症状固定と診断されました。
自賠責の後遺障害認定
弁護士が代理し、自賠責に後遺障害の申請を行ったところ、肩関節の運動障害が後遺障害第10級10号と認定されました。
保険会社との示談交渉
裁判所基準で損害賠償額を計算して保険会社に提示し、示談交渉に入りました。
交渉の結果、当方の請求をベースに納得できる内容で示談が成立しました。賠償額は約1440万円(治療費を除く。自賠責保険金を含む。)となりました。
ポイント
肩の治療
肩の治療には、手術、リハビリともに高度の専門性が必要となりますので、症状が改善しない場合は、肩に強い病院でセカンドオピニンをいただいてもよいと思います。
その病院で、外科的手術により改善する見込みの有無、手術のリスクなどの意見をいただけますし、手術しない方針となった場合でも、治療方法のアドバイスが紹介元の病院に送られますので、その後の治療に生かすことができます。
肩の腱板損傷の後遺障害認定
診断書に「肩腱板損傷」と記載されているからといって、自賠責で後遺障害が認定されるとは限りません。診断書に「腱板損傷」と記載されていても、自賠責で「画像上、外傷性所見がない」とされることはよくあります。ある程度の年齢になると腱板損傷がある方が多く、事故により腱板を損傷したとは評価できないことも多いからです。
重要なのは、MRIで外傷性の変化があるか否かです。本件では、MRIで、肩甲下筋、棘状筋の筋腱内に輝度変化を認め、上腕二頭筋周囲に液体貯留、三角筋表層皮下組織に輝度変化を認めましたので、外傷性変化と評価され、後遺障害が認定されました。
裁判所基準で賠償請求をすること
本件は、保険会社基準と裁判所基準で賠償額に何倍もの差が出ると考えられ、弁護士に依頼し裁判所基準で請求した方がよい事案です。
示談交渉では、保険会社は、訴訟前の段階であることを理由に、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料を裁判所基準の8割にするよう求めてきましたが(大半のケースでは、そのように求められます。)、交渉し裁判所基準のとおりの金額でまとまりました。
次に、後遺障害による逸失利益の労働能力喪失期間を何年とするのかが大きな争点となりました。関節内骨折を原因とする運動障害では可動域が改善する可能性はほぼないといえるのですが、本件では、軟部組織の損傷(腱板損傷)により関節炎や腱板炎を発症し、痛みのため動かさないでいる間に肩関節拘縮に移行した病態です。このような病態では、どこまで運動障害が続くのかは不透明です。交渉が不調に終わり訴訟になった場合の見通しを立てておきたいと思い、医師に相談し、医学的に見て、どの程度の期間、障害が続くと見込まれるのか、ご意見をいただき、その意見を踏まえて交渉での落とし所を探りました。